かっこいい名前の猫とクリームソーダ〈新宿〉【休日クリームソーダ日和.37】
「最近よく行く喫茶店が、君も好きそうだと思ったんだよね」
仲間内の飲み会で、隣に座った彼が顔を寄せて言った。
実は意中の彼。
今日だって、隣の席にさりげなく座るのに勇気を使い果してへとへとだった。
そんなことなど全く知らない彼は、
鼻歌まじりにスマホを何度もスクロールしてから、画面の角度を緩やかにしてくれる。
それを合図にわたしは隣から覗き込んだ。
「猫だね」
「猫なんだよ」
店内を闊歩する猫が写っていた。
「しかもね、名前が石松っていうの」
「森の石松?」
「おそらく。次郎長って猫もいるから」
軽くスワイプすると次の写真が出てきた。
また、石松の後ろ姿。
写真が壊滅的に下手で、不器用な彼が愛しくて笑った。
でもきっと、彼はわたしが猫がかわいくて喜んでいると思っているのだろう。
満足そうに頷いていた。
「気に入った?」
「うん、とても。行ってみたいな。一緒に行ってくれる?」
「もちろん」
今までずっと誘う勇気が出なかったくせに、
“石松さん”の顔がどうしても見たいと思ったら自然と言葉が出ていた。
カフェに行ったら自分へのご褒美に、クリームソーダを頼もうかな。