だれも知らないクリームソーダ〈渋谷・番外編〉【No.63 BEL AMER】
だれも知らない優しい言葉であの子の孤独を殺せてたらな、
そんな歌が耳に届く
そうだよなぁ
聞いたこともない新しい言葉で
あの子の孤独を、不安を、殺すことができたら
それはとても幸せなこと
声を持たない私が
どんなに叫んでもあの子のもとまで届かない
だれか、どうか、チョコレートのように甘くほどける言葉で魔法のように
もどかしくて引っ掻いて
爪痕を残すことすらできなくて
つるつると滑るサテンの波を
見つけてほしくて泳いでいる
届かない
届きようがない
近づいては離れて
波ならばまた帰るけれど
私たちはきっと、離れたらもう触れることすらできなくなる
あの子が泣くと私も悲しいよ
だけど孤独は絶対に殺せない
せめてこの手の平で半分に分け合うことができたなら
私にはそんな言葉思いつかない
ましてや私の声では絶対に届かない
遠くから眺めて見つめて見守って
ヤマアラシのジレンマが優しさも溶かし尽くしてしまいそう
だれか、どうか、私に魔法の力を
そしたらあの子の黒い部分をぜんぶぜんぶ吹き飛ばしてやれるのになぁ
text & photo/浦田みなみ
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BEL AMER
(渋谷 東急フードショー店)
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