ゆれるクリームソーダ〈下北沢〉【No.57 Sunday Brunch(サンデーブランチ)】
「隕石」という言葉を度忘れして「星が落ちる」と検索した。
Googleは探していた言葉を教えるついでに、そこから思い起こされる世界中の詩や歌を見せてくれた。
そうか、人は落ちていく星に、亡くなってしまった大事な人や失われた恋を投影させるんだな。
それがかけがえのないものだったなら、たしかに空から落ちるときに願い事を叶えてくれても不思議はない。
映画を観終えてから30分、古着屋さんで時間を潰してからカフェに戻り、紫陽花みたいにデコレーションされたクリームソーダの丸いグラスを揺らす。
お腹がぺこぺこだったのに、ついかわいさに負けてランチメニューではなくチーズケーキを頼んでしまった。
紫陽花はその形から星にまつわる名前のついた品種も多いけれど、こんなにたくさんの星を食べたら、流れ星を見つけずとも自分の願い事くらいなら叶えられるんじゃないかな。
さっき観た映画は、去年公開されるはずが一旦白紙になり、そして今年に延期になった。
もしかしたらもう観られないのでは、なんて思ったけれど、あのとき一緒に観ようって話していた人と観ることができて本当によかった。
今私が願うことはたったひとつ。
きっと同じ思いを抱える人は今、世界中にたくさんいる。
みんなの気持ちをくっつけて、その大きさ順に叶えられるなら、真っ先にそれぞれがなくしてしまった2年間が逆戻りするだろう。
2019年に制作された映画の中には、なんてことのない日常の愛しさがあふれていて、みんながマスクの存在など知らないかのようにあらゆる表情を丸出しにしたまま、くっついたり離れたりしていた。
私の思いがどれだけ募ったら空に還り落ちるのだろう。
ゆらゆら揺れながら、この世はあの青と連結している。
特に今日みたいに晴れた日は、このゼリーみたいに透き通っていて弾けそう。
願いは昇り、星は落ちる。
こんなに揺られていては、どちらが先かわからなくなりそう。
text & photo/浦田みなみ
<access>
Sunday Brunch(サンデーブランチ)
住所:東京都世田谷区北沢2-29-2 フェニキアビル 2F
TEL:03-5453-3366
営業時間:11:00~19:30(L.O.19:00)
※紫陽花クリームソーダ、紫陽花チーズケーキの販売は2021年6/末までの予定だそうですが、通常メニューにもクリームソーダはあり、また、都度シーズナルメニューを提供されています。