クリームソーダは見つからない〈渋谷〉【No.62 桜丘カフェ】
時々夢か現実かわからなくなる。
覆いつくす夜に街中の光が飲みこまれる前に慌ててベッドに潜り、目を閉じて今日のことを思い返す。
大丈夫、ぜんぶ本物。
でも目覚めると嘘も本当もごちゃまぜになって記憶に刻まれる。
仕事中も、友だちと話しているときも、それはふとしたときに現れる。
リアルと同じ顔をして目の前に飛び出すから「前にも同じことがあったな」と思うけれど、本当に体験したことなのかどうかはわからない。
私の体はぐうっと伸びていく。
現実と夢は境目がない。
私は表裏一体のそれらに手足を一本ずつ突っ込んで、眠ったり起きたりしている。
たまに思う。
本当は起きている今こそが夢なのではないか。
本当は虚構だと思っている世界こそ現実なのではないか。
そこではあの子のお父さんも私の恋人もみんな生きていて、そしてこれからも生き続ける。
きっと真実はクリームソーダの中の赤いチェリーだけ。
赤い赤いあの色は夢の中では再現できないから。
でもこうして口にふくんでしまえば、真っ赤なチェリーも闇の中、私の中。
私は夢と現実を行き来して、そしていずれどちらかに溶けていく。
チェリーはだれにも見つからない。
text & photo/浦田みなみ
<access>
桜丘カフェ
access:東京都渋谷区桜丘町23-3 篠田ビル1F
tel:03-5728-3242
※肝心のチェリーが写真から見当たらないのが大問題ですが、グラスの底に沈んでいる&私のカメラでは暗くて見えないだけです。