#休日クリームソーダ日和

アイスがとけるまでの刹那はあの夏の日の眩さみたい。

夏の終わりのクリームソーダ〈西小山〉【休日クリームソーダ日和.04】

クリームソーダ

まだ暑さの残る時期だった。

 

閑静な住宅街にあらわれるカラフルなフルーツ、それから、笑っちゃうくらい歴史を感じる看板。

「フルーツパーラーたなか」。

フルーツパーラーたなか
なんとなくショーケースの中の、嘘みたいな色合いのパフェだとかかき氷だとかを眺めていたら、

店主が出てきて颯爽と店頭のフルーツを2,3手にして戻る。

 

それに促されるように中に入ると、ちょうど奥の席が空いていた。

 

せっかくなら新鮮なフルーツを使ったジュースなんかも飲みたいけど、注文は決まっていた。

「クリームソーダ、2つ」。

 

たまに聞こえる車の音と、どこかからは子どもの声。

店内の小さなTVに映る相撲の試合を、学生たちは会話をやめずに時折ぼうっと見ている。

フルーツパーラーたなか

あれ、こんなに懐かしい味だったっけ。

子どものころは炭酸が飲めなかったはずなのに、クリームソーダはもとの場所に帰るみたいにして喉を通っていく。

 

入口から差しこむ光はもうとっくに夕日に変わっていた。

授業が終わってもなんとなく友だちとしゃべって過ごした放課後の教室みたい。

 

いつかは見ることができなくなることを、触れている今でさえなんとなく予感してしまうこの感じ。

 

外に出ると、ちょうどお祭りの日だったようでお神輿を担ぐ法被の群れが通り過ぎて行った。

同じ道を歩いてゆっくりと駅に向かい、どんどんと小さくなっていくその音に夏の終わりを思う。

フルーツパーラーたなか

2年後の東京オリンピックのとき、私はなにをしているのかな。

フルーツパーラーたなかは、そのときにはもうなくなっているそうだ。

 

 

<shop>

フルーツパーラーたなか

東京都目黒区原町1-14-16

TEL:03-3714-1048

営業時間:9:00~21:00

定休日:不定

フルーツパーラーたなか


 

text & photo/浦田みなみ