フェットチーネグミクリームソーダ味〈番外編〉【休日クリームソーダ日和.23】
新しい仕事に就いてもう1ヶ月半。
正直、前の仕事より格段に性に合っていると思う。
ただ、最終日の日差しだけ思い出す。
夏の入り口。
いつもお弁当を持参していたんだけど
その日はたまに食べに行っていた近くのお寿司屋さんで一番仲の良かった同僚がごちそうしてくれた。
彼は午後一番にセミナーで外出すると言っていたけど忘れたふりをして
ついでに近くのジュース屋さんでコールドプレスジュースもねだってみる。
オールグリーン、私は氷ぬき。
最初はフルーツジュースを頼むと言っていた彼もなぜか同じのを頼んで、苦い顔をしながら飲んでいた。
今年からちゃんとしたUVケアデビューを果たした私は、今までみたいに海に行くときだけじゃなくてこういう平日にも日焼け止めを塗るようにしている。
ジュースを持つ腕、ひじの裏側ににじむ汗がそれと混ざって少し白い。
お返しにコンビニに寄ってお菓子を買った。
同じ部署の人たちにも配りやすい、グミ。
「クリームソーダ味」の文字を見て即決した。
「寂しくなるなぁ」
拾ってもいいのかどうかわかりかねるボリュームで聞こえた声に、私は困ってしまってへらっと笑う。
「まぁまた飲みに行こうよ」
これで終わりなんかじゃない。
私たちのあの日々が、無意味なものになるわけじゃない。
だから寂しいなんて、別れの合図を口にしないで。
新しい仕事は翌月から始まることが決まっていた。
6月末の真夏日。
限定味のグミの酸味が、ふわりと浮き立つような私の体をぎゅっと留めさせる。
ああ、おいしくない。
想定はしていたけど、こんなにおいしくないなら、全部オフィスで配らないと。
なかなか飲み進められないジュースを右手に、左手だけでグミを出して、彼はまた苦い顔をした。
今度は苦いものじゃなくてまずいものを口に入れたときの、苦い顔。
お昼後の時間帯、オフィスに向かうエレベーターはなかなか来ない。
隣の人がまた、寂しいなんてろくでもないことを言い出す前に早く来てほしい。
そんなことを思いながら、汗のたまった腕を指先でちょんと拭った。
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フェットチーネグミクリームソーダ味
ファミリーマート限定、数量限定で2019年6月25日にブルボンより発売。
通常価格は156円(税込168円)。
※店舗によって価格が異なっていたり、取り扱っていない可能性があります。
text & photo/浦田みなみ