100円クリームソーダ〈番外編〉【休日クリームソーダ日和.14】
お花見をした後で電車に乗ってやってきた日本橋。
秘密のカードを持つ者だけが扉を開くことができるなんて、子どものころによく読んだファンタジー小説みたい。
廃ビルと現代アートの融合はなんだか不思議な感じ。
静寂の中、機械音と足音だけがやけに響いて、時間まで忘れそう。
もしかして、今だけ、ここだけは、光より音の方が速く私に届いているんじゃない?
ちょっと目をこらしたら、足音に続いて影が伸びていくのが見えそうよ。
花冷えの3月末。
靴底からやけに冷たい地面の感触だけ伝わって、光まで怠けてしまうような空間は体の芯まで凍えてしまうかも。
なのに、外に出て真っ先にクリームソーダを買っちゃった。
だって、おかしくて。
ペットボトルのクリームソーダなんて。
自動販売機で手に入るクリームソーダなんて。
見つけた瞬間、手を伸ばしていたの。
口の中で甘くはじけて、そしてメロン独特の、まるで夏を偽装するかのような瓜っぽい香りが鼻をぬける。
そんなクリームソーダに思いを馳せてしまうのだけど、もう今は思い出さえもプラスチックのボトルに閉じ込められるものなのね。
蓋を開けると炭酸が勢いよく外気に飛び出す音。
そして甘ったるい、人工的なメロンの香り。
なんだか笑ってしまいそう。
でも、持ち運べる思い出っていうのも、いいものなのかも。
<detail>
まろやか贅沢仕立て メロンクリームソーダ(ペットボトル)
株式会社スターベンディングより販売、100円。(日本橋の自動販売機で購入)
< TACKING CITY NIHONBASHI>
日本橋堀留町のHaunt1910にて2019年3月22日(金)~24日(日)、29日(金)~31日(日)に開催された若手アーティスト、クリエイターによるグループ展。
会場を2箇所に分け、最初に受付でチケットとカードを引き換えないと次の会場に入場できない仕様をとった。
なお、2019年4月現在は終了しているが、今後継続的な開催を計画しているとのこと。
text/浦田みなみ
photo/yumeguko、浦田みなみ