古い映画とクリームソーダ〈渋谷〉【休日クリームソーダ日和.46】
一緒に観ようと約束していた映画をひとりで観に行った。
もう彼には一切気持ちはないのだけれど、
映画館での上映を知ったから、
観るタイミングを逃し続けていた私はここだと思って
チケットを1枚取った。
静かな夜、青臭い昔の映画を観た。
失恋をするとたびたび
心に大きな穴が空いたと表現される。
それは思いを寄せる人が占めていた部分が
まるっと消えてしまうからだという人もいる。
ただ私は違った。
あれから、私の人としての大事な部分が
ずるっと欠落してしまったように思う。
それに気づいてすぐの頃、
どれだけ新しく注いでもどんどん奥に吸い込まれて、
なかったことになってしまう様に愕然としたものだ。
それはもう、どうしようもないくらいに、
元の形には戻らないんだって、無理やり目を向けさせられて。
正直、私は映画を観たあと泣いてしまうと思っていたんだ。
けれど、流すはずだった涙はぽっかりと空いた穴に吸い込まれていって、
明るくなった劇場で何も写っていないスクリーンを
ぼんやりと何の感情もなく見つめているだけだった。
映画館を出て、ふらりと喫茶店を求めた。
初めてのお店だったけど、ためらうことなくひとりで入店した。
誰も私のことなんて、見ていないって知っているから。
そんな自分なんて本当は嫌だし可愛くないし悲しいけれど、
でもそのおかげで、夜をひとりで抱えることなく、
クリームソーダを飲めているっていうのなら。